MCMNET主催
講演『小泉改革の行方と政局の動向について』

はじめに

去る3月8日(金)午後1時半から参議院会館第2会議室で行なわれた、MCMNETの第6回政策勉強会の席上での青山昌史氏(元朝日新聞政治部長・編集局長・現政治ジャーナリスト)の「小泉改革の行方と今後の政局」についての講演要旨は以下のとおり。(都甲)

小泉改革の問題点

小泉改革の一番の問題点は、財政、金融面の改革に手がつけられていないことです。行財政改革が声高に言われながら、一番肝心の財政金融改革がなおざりにされていることです。

郵政三事業や道路公団など特殊法人には手をつけかけているが、その根幹をなす財政・金融面の改革に全く手をつけていないことは、小泉改革の真贋を見定めるうえで重大なポイントです。それはいったい何故か。

それは、財政・金融面の改革なくして行財政改革は不可能だからで、いわば本丸の財政・金融改革に比べれば郵政三事業や特殊法人の改革は脇役なのです。

現在わが国の財政は破綻寸前であり、金融面では不良債権はますます肥大化し、デフレ・スパイラルは収拾がつかない状況になりつつあります。このままゆけば日本は破産国家です。

この点の改革に早急に手をつけることこそ、今わが国の最大の課題なのです。

ところが小泉首相は、故意か、無能なのかわかりませんが、この一番大事な財政・金融改革に消極的で、財務官僚の言うがままになっているのです。

わが国行政の一番の癌である財務省・金融庁や政府系銀行・都氏銀行に改革のメスを入れることを躊躇している小泉首相の真意が図りかねます。小泉改革の成否は、実はこの点にあることを私は指摘しておきたい。

6月に内閣改造

さて、政局は当面小泉改革、なかんづく不良債権処理と景気動向の推移、それに鈴木、加藤疑惑がからんで流動していくでしょうが、とりあえず国会終了後の6月に内閣改造があるかどうか、小泉首相は一内閣一閣僚と言っていますが、小泉内閣も1年経ってほころびが目立ち、そろそろ人事刷新が必要となっています。

派閥からの強いつき上げもあるでしょうが、現内閣には問題閣僚が多すぎます。

狂牛病の武部農水相を始め、塩川財務、柳沢金融、石原行革、遠山文部科学、扇国土交通等々、無能な閣僚が多すぎます。

民間からの竹中経済財政相や川口外相も影が薄い。

これらの更迭をしないと、小泉首相の言う諸改革も思うに任せないでしょうから、6月改造を思い切ってやるべきです。小泉は今はやらないと言っていますが……。

小泉後は誰か

ところが小泉後は誰か。

小泉首相が不良債権処理を中心とした財政・金融改革に失敗し、わが国経済が破綻寸前となれば当然小泉首相退陣で、よりベターな政権をということになります。ではその受け皿は誰か。

まず自民党内ですが人材不足でこれと言った人がいない。

最大派閥の橋本派は、例の鈴木宗男問題を抱えて動きがとれません。おまけに派閥の長の橋本龍太郎は鈴木ショックもあってか病床にあるし、野中や青木は寝業師だが政権担当者ではありません。

小泉後の有力候補の一人であった加藤紘一は政治生命を絶たれ、次世代の高村、麻生、平沼あたりも実績もなく能力も定かではありません。かといって古賀や亀井は古い族議員の象徴で、全く人気がありません。

では野党はどうか。

最大野党の民主党は世論調査の政党支持率はいつも7〜9%前後に低迷し、人気が出ません。

鳩山と菅の間も今一つしっくりいかないし、党内には旧社会党の横路を中心とした左翼グループが、執行部の足を引っぱってごたごたが絶えません。

自由党の小沢はこわし屋のイメージが強く、野党をまとめていく力がない。

婦人層に人気の田中真紀子は、全くの勉強不足。人の悪口を言うばかりで論外です。特に反米親ソの外交観は国益を害するでしょう。

唯一の切り札として石原東京都知事が能力・手腕ともに期待できるのではないでしょうか。

しかし都知事の任期がなお一年余りあり、国会に転じようとしても総選挙がなければどうしようもない。

そうすると結局当面は小泉のほかにいない、ということになります。

情けなくもわが国政局の人材権は当面小泉に期待してゆくしかない、ということになります。不十分であり、NATO(No Action Talk Only)と言われる小泉ではありますが、尻を叩いて沈没しかけた日本丸を沈ませないようにするしかないのは残念です。

おわりに

(註:柳沢金融担当相や財務官僚は、かつて銀行に公的資金を投入して、これで銀行を正常化した。ここで再投入すれば責任を問われるのを恐れているのです。)

筆記文責……MCMNET・都甲正一