MCMNET主催「航空自衛隊百里基地・見学会」

はじめに

先日行われた「横須賀基地見学会」に続き、今度はわが国の防衛体制をこの目で確かめるべく、F-15防空部隊を持つ首都から最も近い航空自衛隊基地である百里基地を訪れました。(平成14年8月20日)

ちなみに今回の参加費は、食事付きで3500円でした。

このページでは、当日の模様をご紹介したいと思います。なおMCMNETでは、こうした勉強会を定期的に開いております。どうぞお気軽にご参加ください。

バスで百里基地に向かう

駅

当日朝、常磐線石岡駅にて、参加者が集まりました。

前回同様、若い方から年配の方まで、いろいろな顔ぶれが集まっています。全体的に気軽でリラックスした雰囲気です。

バス

小型のバスに全員乗車し、30分ほど揺られて基地に向かいます。

天気も良く、見学には最高といった感じです。

第7防空司令部にて説明を受ける

スライド

百里基地の概要等のビデオをスクリーンにて見ながら、本日の見学予定などの説明を受けます。

戦闘機の本物のコックピット内部の場面では、激しいGに耐えるパイロットのリアルな息遣いがそのまま収録されており、想像以上の厳しさを想像させます。

これだけでも、なかなか見る事が出来ない映像だな、といった印象を受けました。

なおここ百里基地では約2000名の自衛官が働いており、その内約60名が女性だという事です。

偵察航空隊を見学

航空隊説明

建物を出ると、最初に偵察航空隊を見学しました。

ここ百里基地には、なんと日本唯一という、航空自衛隊偵察機部隊があります。彼らは、平時においては火山活動の監視や災害発生時の被害状況の確認を行っています。

説明を受けたこの部屋には、阪神大震災を始めたくさんの災害時の航空写真が飾られており、その活動実績をアピールしています。

この部隊は昭和30年から数えて100数十回の災害偵察を行い、救助や復旧活動の目として活躍してきました。

例えば阪神大震災では、1万数千枚の航空写真を撮影し、その中からいち早く救助、復興用の重要ポイントを確定するという作業を行なったそうですが、これらは、膨大な写真の中から、豆粒ほどの大きさのカモフラージュされた敵戦車を発見するといった技術を応用して可能になったものという事です。

RF-4EJ

次に偵察機の見学と説明です。

これは偵察機のRF-4EJです。F-4ファントム戦闘機の機体を偵察用に変更したものです。

低空を飛行する事もあるため、機体には迷彩柄が塗装されています。もちろん、機体下部底面部分にはグレーの保護色(上空に解けこむ色)が塗られています。

パイロット

パイロットから説明を受けます。

全体的に航空自衛官の方からは、礼儀正しくもフランクな印象を受けます。泥臭い印象が無いのは、航空自衛隊ならではでしょうか。

エアインテーク

エアインテークには、しっかり蓋がしてあります。もちろん、いざ発進というときには取り外されます。

F-4はもともと戦闘機ですが、このRF-4EJは、武器の代わりに各種の偵察用電子機器を搭載する事によって、偵察機として成立しています。

F4格納庫

格納庫内には、複数の機体があり、我々見学者は自由に歩き回って撮影をしたり、機体に触れたり、クルーたちに様々な質問をぶつけたりしていました。

その間も、すぐ横の滑走路からは、さまざまな機体がひっきりなしに飛び立つ音が途切れる事がありません。

これら航空機は、整備士は自分専用の担当機体を持つ事が出来るそうですが、パイロットはいつも同じ飛行機に乗るとは限らないという事です。つまり愛機を持てるのは整備士だけなのですね。

自衛官たちと同じ部屋でランチタイム

食堂

ここで昼食です。

ご覧の通り、1000人収容出来る巨大なランチハウスで、皆と同じメニューを頂きました。

部屋のなかのテレビでは、高校野球や笑っていいともが流れています。

ランチメニュー

メニューは当然、若い自衛官に合わせてしっかりカロリー計算されたものです。

とはいってもご覧の通り、漬物と味噌汁、肉数切れと少しの野菜というかなり質素なメニューで、意外なほど量も少なめです。

自衛官たちは、皆もくもくと食事をしている感じで、談笑したりおしゃべりをしている人は少ない感じがしました。

食事後は売店

売店

食事後は、なかなか普段は見る事が出来ない自衛隊基地内の売店を散策です。

このようにスニーカーも各種売っているし、生活用品はもちろん、本屋やクリーニング、郵便局のATMもあります。

たいていのものは売っていますが、売っていないものもあり、なかなか見ていて面白い経験でした。

いよいよ飛行部門を見学

F-15説明

要撃戦闘機(対空戦闘機)のF-15J/DJの説明と見学です。

パイロットは若くして階級が一尉(昔でいう少尉)という方で、さすがに自衛隊最高の機体に乗る方はエリートです。穏やかで礼儀正しい印象です。

彼が示しているのは、武装を取り付けるラックです。ここに、例えばサイドワインダー(空対空ミサイル)などの武装を取り付けて戦うわけです。下の巨大なものは予備燃料タンクです。

機銃

これは機体右側にのみ装備された機銃です。もっともミサイル戦闘がメインである現代では、実際の戦闘で使われるシーンは非常に少ないといわれます。

日本にあるF-15は、アメリカからライセンス生産をしているもので、一機あたり約130億円という、いわば戦闘機のロールスロイス。世界でもっとも高価な戦闘機です。

しかしながら設計年度も古く(すでに米軍での生産は終了)、世界最強の呼び声も最近ではややしぼみ気味。特に米軍のものと較べ、日本のF-15は、米軍からブラックボックスで提供されている電子機器部分のランクが、米軍用より下がるといわれています。

F15全景

午前中見ていたF-4やT-4練習機と較べると、F-15は本当にでかい!実に堂々とした機体だと感じます。カメラのフレームに収まり切りません。

パイロットの話では、やはりそのパワーは他の機体よりずっと力強いという事です。

コクピット

操縦席には、ここまで近づいて説明を受けました。どれがミサイルの発射ボタンか、といった質問にも親切に答えていただきました。

一人分のコックピットには余分なものは何も無く、計器や各スイッチ類で埋まっています。

滑走路

格納庫の外をみると、たくさんのF15が並んでいます。その向こうの滑走路からも、ときおり飛び立っています。

ところで航空自衛隊では、少なくとも年間150回以上のスクランブル(緊急発進)が行われており、領空侵犯の機体に対処しています。

百里基地では昭和42年の8月から本日までで1183回の出動をこなし、今年もすでにこの日までに3回の出動を行いました。

アラート待機といって、パイロットが交代で24時間常に待機しており、スクランブルがかかればこれらF-15戦闘機が5分以内に離陸出来るシステムになっています。

記念写真

全員が集まっての記念撮影です。

この写真を見ても、機体の大きさが良くわかるかと思います。

救難隊を見学

救難隊説明

次は災害救助や戦術救助を担当する百里救難隊の見学です。

スライドによる説明を受けます。とても真面目そうな方で、びしっとした所がいかにも自衛官といった印象。

U-125A

救難捜索機のU-125Aです。遭難用レーダーや赤外線暗視装置、救難用加工品及び保命用援助物資投下装置を備え、広範囲の捜索活動の主力になります。

機体下部の奇妙なふくらみの中にレーダーが入っています。

側面には目視用の縦長窓があるなど、ビジネス機を原型としつつも各部分に工夫の凝らされた特徴があります。

UH-60J

上記U-125Aとコンビで活躍する、救難ヘリコプターのUH-60Jです。

海上や山中等、直接の救難作業はこのヘリが担当します。これらの部隊は、もちろん自衛隊のみならず、民間の災害救助にも出動します。

コックピット

ヘリのコックピットです。戦闘機と違ってゆったりとした機内に、やはり様々なスイッチ、計器類が並びます。

百里基地ではだいたい年数回、災害、人命救助で出動します。現在までに航空救難では39回、21名の人命を救助、災害救難(民間)では75回、259名の人命救助の実績があります。

こうして基地内の各所を見学し、私たちはまたバスに戻ったのでした。

百里基地では我々民間人に対して、慎重に言葉を選びつつもわかりやすくいろいろと説明してくれ、広報に力を入れている印象を受けました。

とかく日本では偏見と差別の目で見られがちな軍事施設ですが、彼らのこうした傾向は良い流れですし、我々民間人も、納税者として積極的に情報を求め、この目で確かめて行くことが重要です。

MCMNETでは、今後もこういったイベントを開催していきますので、みなさんもぜひお気軽にご参加ください。問い合わせはいつでもお待ちしております。

平成14年9月9日 記